エッセイ「大事な何か」 特別章 つれづれ

< 朝比奈のブル8 >


 あの日、僕もNHKホールにいました。
去年の3月6日、朝比奈隆がブルックナー交響曲第8番を振った日です。
それは今まで行ったコンサートの中で(クラシックだけでなくロックも含め)、いや、今後一生を通じても最高のものかもしれません。
それほど心に残る、すばらしい演奏でした。


 実は演奏前まではあまり朝比奈、いい印象ではなかったんですよぉ(^^
彼のベートーヴェンのCDが、あまりピンと来なかったから…。
音楽評論家の宇野功芳が「交響曲の名曲・名盤」(講談社現代新書)の中で、ベートーヴェンの交響曲9曲のうち7曲までを奨めていたので、僕は「全集」を買っていたんです。


 宇野の評論は、信頼できます。
ムラヴィンスキーやクナの演奏に出会えたのも、そのきわめて主観的な表現によって彼の感性を感じることができたからです。
もちろん感じ方が同じというわけでなく、ブルックナー評などは満足してない部分もありますが、それは判断の材料たりうる質の高い情報だと思います。
一度、彼の指揮した演奏を聴きに行ったこともあるんですよ。
「エロイカ」でしたけど、その時の印象は「やはりシンフォニーって難しいんだなぁ」って感じ(^^;







 そんなんですから、当日もあまり期待してなく、開演に遅刻しそうになってしまったくらいです。
ですが、それは第1楽章から緊張感に満ちたすばらしいものでした。
僕がブルックナーを判断する上で一番重要視している2楽章もすばらしく(巨匠でもあまりない)、重要視してない3楽章がまた驚くべきほど最高で、クライマックスはそれまでの内容を上回るようなスケールで演じ切ったのです。


 先日、なかたさんのHP「音盤芸能」におじゃまして、あの日の演奏に大勢の方が「すばらしい」と感じているのを知り、すごくうれしくなりました。
「すばらしい」という気持ちを分かち合うって、ほんといいですよねぇ。
あ〜、これからやる朝比奈のブル8、全部聴きに行きたいなぁ(^^




99/7/14作成

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